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賃貸不動産の相続は、注意が必要

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賃貸不動産の相続は、注意が必要

【読んでいただきたい方】
  • ・賃貸不動産をお持ちで相続対策を考えている方
  • ・親や配偶者が賃貸不動産を持っている方
  • ・遺産の中に賃貸不動産があり共同管理を考えている方

アパートなどの賃貸不動産の相続は、通常の不動産の相続と比較して、相続人間の利害が複雑に絡み合い、トラブルを引き起こしやすいとされます。相続財産に賃貸不動産が含まれる場合は、被相続人(=故人)の存命中に十分な相続対策を行うことが重要になります。

ここでは、賃貸不動産の相続で生じやすいトラブルや、トラブルを防ぐ方法について解説していきます。

【目次】

1. 賃貸不動産の相続手続きは自力でできる?
① 賃貸不動産のローン(負債)のチェック賃貸不動産のローン(負債)のチェック
② 不動産登記(相続登記)
③ 不動産の管理
2. 賃貸不動産が相続財産に含まれる場合のトラブル
① 賃貸不動産の所有権をめぐる問題
② 遺留分をめぐるトラブル
3. 賃貸不動産のトラブルのリスクを下げるには??
① 遺言書を残す
② 家族信託を利用する
③ 相続が発生する前に売却する

1. 賃貸不動産の相続手続きは自力でできる?

相続財産の中に、アパートなどの賃貸不動産が含まれている場合もあります。このような場合でも、自力で相続手続きを行う方はいらっしゃいます。しかし、自力で行うと、以下のような煩雑な手続きを行わなければならず、非常に骨が折れます。

① 賃貸不動産のローン(負債)のチェック賃貸不動産のローン(負債)のチェック

遺産の対象となる財産は、不動産や預貯金のようなプラス財産だけでなく、借金のようなマイナス財産も含まれます(民法896条本文)。

賃貸不動産にローンが残っている場合は、当然、そのローンも相続の対象となります。相続放棄をしない限り、相続人は残りのローンの返済義務も負担しなければなりません。

また、相続人の一人がすべてのローンを負担するという内容の遺産分割を行う際は金融機関から承認を受けるようにしましょう。

上記のような内容の協議が成立しても、金融機関から承認を受けなければ、金融機関から他の相続人に対して法定相続分の請求が可能なため、注意が必要です(民法902条の2)。

もっとも、場合によっては賃貸不動産のローンを負担しなくてよいこともあります。
例えば、アパートローンを借り入れた被相続人(=故人)が、団体信用生命保険生命保険付きのローンに加入していれば、被相続人の死亡と同時に保険会社がローンの残高分を支払うため、アパートローンの負担がなくなります。

賃貸不動産のローンをチェックする際は、このような生命保険に加入しているか、保険の適用はないかなども確認しましょう。

② 不動産登記(相続登記)

相続した不動産について、被相続人の登記名義から相続人名義に変更することを「相続登記」といい、不動産を相続した際は必ず行いましょう。

相続登記をしなければ、不動産の所有権を取得したと主張する第三者が現れた場合や、相続人の債権者が差押えを行った場合などで、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。賃貸不動産を売却したり、抵当権を設定したりする際にも登記が必要になるので、速やかに名義変更の手続きを行いましょう。

また、近年の法改正により、「所有者不明土地」(不動産登記簿により所有者がすぐに判明しない土地)問題解消に向けて、2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化されます(法務省|所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法))。不動産を取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記申請を行わなければならず、正当な理由のない申請漏れは罰則(10万円以下の過料)の対象です。このように、相続登記を怠ることにより、大きな不利益を受けます。不動産を相続した際は、迅速に相続登記を行いましょう。

相続登記の申請先は、相続した賃貸不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)です。
申請するためには、

  • ・ 登記申請書(書式は法務局ホームページ参照)
  • ・ 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・住民票の除票
  • ・ 相続人全員分の戸籍謄本・新たに名義人となる者の住民票

など、適宜必要な書類があります。さまざまな書類が必要なので、不足のないよう注意しましょう。また登録免許税もかかり、固定資産税評価額の0.4%を納付する必要があります。

③ 不動産の管理

賃貸不動産は家賃収入があるため、家賃の取り扱いがよく問題となります。いつ発生した家賃かによって、以下のとおり、取扱いが異なります。家賃収入の分配を行うにあたり、このように権利関係に注意する必要があります。

  • 相続開始時点(被相続人の死亡の時点)で、滞納されている家賃
    未払賃料債権は、相続分に応じて各相続人が分割して取得(最判昭和29年4月8日民集8巻4号819号参照)。

  • 相続開始から遺産分割までの間に生じた家賃
    遺産に属さず、後にされる遺産分割によらず、各相続人がその相続分に応じて取得(最判平成17年9月8日民集59巻7号1931頁)。

  • 遺産分割後に生じた家賃
    その賃貸不動産を相続することになった相続人が取得。

賃貸不動産を相続した後は、不動産を売却等しない限り、その不動産をしっかり管理していかなければなりません。固定資産税等の税金が発生しますし、家主には賃貸不動産の修繕義務等もあり(民法606条1項)、老朽化した場合などでは修繕費用が発生します。

管理会社等に委託すれば、賃貸管理の負担は軽くなりますが、その分、手数料がかかり収益は減少します。

他にも被相続人の戸籍調査や、相続財産調査、遺産分割協議・協議書の作成、相続税の申告などの手続きが必要になることがあります。このような煩雑な手続きを行わなければならないため、ほとんどの方が弁護士等の法律専門家に依頼しています

費用は掛かりますが、迅速かつ適切に手続きを行うことができ、手続きのリーガルチェックや、トラブル防止策なども行ってもらえます。お困りの際は、弁護士等にご相談ください。

ワンストップ対応に強み!当事務所の解決事例
【当事者】
被相続人:賃貸用不動産を複数所有
依頼者:被相続人の子
相手方:被相続人の子
【事案】
それぞれが取得したい各不動産の評価について意見が対立し、遺産分割調停へ発展。
相手方の評価では、依頼者は望む不動産の半分しか取得(1800万円分)しか取得できないとのことであった。
【解決】
  1. ① 当方で、査定書を準備し、原則、当方の想定する内容(当方の望む不動産は全て取得(3600万円分)で遺産分割調停が成立。
  2. ② 相続登記については当事務所の協働事務所である司法書士事務所でワンストップ対応。
  3. ③ 借主へ相続について連絡。賃貸借契約書の確認。
  4. ④ その他、相続不動産内の農地売却のサポート。Cf.買主探し、農地転用手続き、越境問題の解消、休眠担保の抹消登記手続き。

2. 賃貸不動産が相続財産に含まれる場合のトラブル

相続財産の中に賃貸不動産がある場合、次のようなトラブルが発生する恐れがあります。

① 賃貸不動産の所有権をめぐる問題

賃貸物件を他の相続人と相続して共有にすると、共有者間でトラブルが発生する可能性が高いといえます。

共有とは、一つの物を複数人が共同で所有することをいい、各人がその物を所有する割合である「共有持分」を有します。1棟の不動産を共同で相続した場合、その不動産を各相続人(共有者)が相続分(「共有持分」に対応)に応じて共有することになります。このような共有状態では、持分の割合に応じて不動産の利用方法に次のような制限が生じます(民法251条、252条)。

内容 具体例 持分割合
保存行為 その不動産の価値を維持する行為 ・ 不動産の修繕
・ 不法占拠者に対する明渡請求
各人が単独でできる
使用行為 共有物の全部について、その持分に応じた使用ができる ・ 不動産に居住 各人が単独でできる
管理行為 その不動産を利用・改良する行為 ・ 短期間の賃貸借
・ 賃貸借の解除
・ 不動産をリフォーム
持分の過半数の同意が必要
変更行為 その不動産の性質に変更を加える行為 ・ 不動産の売却
・ 抵当権の設定
・ 長期間の賃貸借
全員の同意が必要

そのため、例えば、不動産を売却したり、長期間の賃貸借をしたりする場合は、共有者全員の同意が必要で、かなり不動産の使い勝手が悪くなります。

老朽化した賃貸不動産をリフォームする場合などでも、共有持分の過半数以上の同意が必要になり、不動産経営に大きな支障が出る可能性があります。

共有者間でコミュニケーションが取れているうちはよいのですが、何らかの理由で仲が悪化した場合、あるいは共有者の一人が経済的に苦しい状況になってしまった場合は、建物をそれまでのように共同管理し続けられなくなる恐れがあります。

また共有持分自体は各人が譲渡できるので、家族以外の第三者が共有者になるリスクもあります。共有は公平な分割方法ですが、問題の先送りともいえるでしょう。

また、賃貸不動産は、家賃収入があるため、その利益配分をめぐってトラブルになる場合もあります。不動産管理の負担や固定資産税等の税負担なども、トラブルの原因となりやすいです。

さらに、共有者が亡くなると、それぞれの配偶者や子どもに相続されることになり、共有持分が細分化されます。そして、共有者の数が増え、不動産の権利関係がより複雑になるリスクもあります。

② 遺留分をめぐるトラブル

また、遺留分をめぐるトラブルにも注意しましょう。

遺留分とは、特定の相続人(被相続人の配偶者、子ども等の直系卑属、両親等の直系尊属)に認められた、相続財産を最低限取得できる割合のことをいいます。遺留分を侵害された相続人は、侵害した者に対して、侵害した額に相当する金銭の支払いを請求することができます(民法1046条1項)。

遺留分は、分割しづらい不動産が相続財産に含まれているときに問題となりやすくなります。

例えば、主な相続財産が賃貸不動産1棟のみの場合、(共有は上記のようなリスクがあるため避けるとして、)相続の方法は①不動産を売却して現金に換えるか②相続人のうちの一人が賃貸不動産を相続するか、になります。

遺言書に基づき、②のように相続した場合、賃貸不動産を相続した者が、他の相続人の遺留分を侵害することになり、各相続人から侵害した額に相当する金銭の支払いを請求される可能性があります。裁判所に請求することにより、相当の期限の許与を受けられますが(民法1047条5項)、負担が大きいことには変わりありません。

このようにたとえ遺言書がある場合でも、相続人の遺留分を侵害する遺産分割の指定が行われれば、遺留分をめぐるトラブルが発生します。遺留分を超える遺言書を作成すること自体は可能ですが、その際は、遺留分をめぐるトラブルが生じないかに注意しながら作成するようにしましょう。

3. 賃貸不動産のトラブルのリスクを下げるには??

賃貸不動産の相続トラブルを防ぐには、次のような方法を検討してみましょう。特に、被相続人になる方が亡くなる前に、事前の準備を行うことが重要です。

① 遺言書を残す

相続トラブル対策として有効なのは、遺言書の作成です。

特に重要なのが、家族全員で相続について十分に話し合うことです。財産リストを作成し、今後の老後生活に必要となる資金を検討しつつ、残った財産を誰に、どのくらい渡すかを考えましょう。そして、介護が必要になった時はどうするか、子どもと同居するか、老人ホームに入るか、不動産は誰が受け継ぐか、など、今後の生活プランについて家族に思いを伝え、考えを共有しておくとよいでしょう。

そして、話し合われた内容をもとに遺言書を作成することで、家族全員が納得のいく遺産分割を行うことができます。

特に賃貸不動産の場合は、上述したように、所有権をめぐる問題や遺留分をめぐる問題が生じます。不動産の一部を売却して分割しやすくする、遺留分を考慮した内容にする(あるいは、家庭裁判所の許可を得て、遺留分をあらかじめ放棄してもらう(民法1049条1項))、などの配慮が必要です。

とはいえ、遺言書は財産を築いてきた遺言者の意向が反映されるものです。相続人からさまざまな注文を受けることもあるでしょうが、最終的に遺言者の納得のいく内容に決めるのが一番良いといえます。

「相続トラブルの防止」と「遺言者の意向」のバランスの取れた遺言書を作成することが大切です

また遺言書の方式にもこだわりましょう。遺言書を作成する場合、自筆証書遺言(自筆で作成する遺言書)で作成する方が多いですが、形式不備等による無効のリスクが高いという欠点があります。

そこで、このようなリスクがない公正証書遺言(公証役場で、公証人に口述し、書き留めてもらいながら作成する遺言書)で作成することをおすすめします

相続トラブルを防ぐ遺言書を作成するには、弁護士等の法律専門家に助言をもらうとよいでしょう。

当事務所の解決事案【トラブルにならない遺言書作成】

賃貸不動産を複数持つ大家さんの遺言書を作成。
長男に多くを相続させるものの、相続人間で問題とならないよう、不動産の査定を行いながら、遺留分に留意した遺言書を作成。
さらに、提携の税理士の協力のもと、相続予定額の確認、二次相続の検討、相続税資金も見込んだ遺言内容の決定等を行った。

② 家族信託を利用する

家族信託とは、老後や要介護時に備えて、不動産や預貯金などの財産を信頼できる家族に託し、財産の管理や処分を任せることをいいます。

アパート経営などをしている家主(「委託者」という)が、認知症になった時など経営を継続できなくなった時に備えて、信頼できる家族(「受託者」という)との間で信託契約を締結し、指定した財産(「信託財産」という)について受託者が管理・処分を行います。

そして家賃などの収益は元の家主(「受益者」という)が受け取ることで、家主に万が一のことがあっても家主は生活に窮することなく、かつ、賃貸不動産の管理を継続することができます。

家族信託は近年注目を浴びていますが、仕組みが難しい制度です。家族信託を利用する際は、弁護士等の法律専門家にアドバイスをもらうことをおすすめします。

③ 相続が発生する前に売却する

相続財産に賃貸不動産があることにより、上記のようなトラブルが発生するくらいであれば、いっそのこと相続が開始する前(被相続人が亡くなる前)に、その賃貸不動産を売却してしまうのもひとつの手です。可分性の高い現金に換えることで、公平な遺産分割を実現することができます。

ただし、不動産を売却してしまうと、今後の生活場所に困ってしまうケースもあります。不動産の売却により得た代金をそのまま家族に贈与すると、税金が高くなるリスクもあります。判断が難しいケースもあるので、お困りの際は、弁護士等に相談しましょう。

神楽坂総合法律事務所は、リーガルサービスの質の良さと迅速さにこだわります。司法書士や行政書士をはじめ、社会保険労務士、土地家屋調査士、不動産仲介会社、遺言執行専門の法人との連携により、ご依頼者様の抱えるさまざまな不安や問題の解消を目指します。
賃貸不動産の相続でお困りの際は、当事務所までご相談ください。

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