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長時間労働とは?時間外労働の限度と対応について

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長時間労働とは?時間外労働の限度と対応について

【読んでいただきたい方】

・長時間労働について知りたい企業経営者の方

【目次】

1. はじめに
2. 長時間労働とは
3. 法定労働時間
4. 36協定
① 概要
② 記載事項
③ 罰則付き時間外労働時間の上限
④ 違反した場合の罰則
5. 長時間労働が事業者に与えるデメリット
① 36協定違反による罰則
② 安全配慮義務違反による損害賠償請求
③ 過労死等による企業価値の毀損
④ 集中力や意欲の低下
⑤ 離職率の増加
6. とるべき対応
7. おわりに

1. はじめに

働き方改革とはいっても、まだまだ問題となっている「長時間労働」。長時間労働による従業員へのダメージは大きく、過労死や自殺も社会問題となっています。

近年、長時間労働問題については公的機関や労働局も取り組みを始めており、より一層、企業全体としての意識改革が求められています。
では、長時間労働を行っていた場合、企業側にはどのようなリスクがあるのでしょう。
また、従業員とのトラブルがあった場合、どのように対応すればいいのでしょうか。

この記事では、一般的に定められている「長時間労働」の定義や原因、企業側のリスクと対処法を確認します。

神楽坂総合法律事務所は、労働分野にも注力した法律事務所で、現に企業と従業員間の紛争も数多く経験しています。また、当事務所では、社会保険労務士と連携してワンストップで労働関係の問題をサポートしております。

解雇をめぐるトラブルについて、わからないことがある方、不安がある方は、一度ご連絡ください。

2. 長時間労働とは?

では、一般に、どのような場合を「長時間労働」というのでしょうか。

長時間労働について、法的に「何時間以上」という明確な定義はありませんが一般的には残業が続くと長時間労働と考えられています。
この目安となるのが、法定労働時間、労働基準法第36条(36協定)と厚生労働省による指導です。

詳しくは後述しますが、例えば、

  • 労働基準法では、1日の労働時間は8時間まで、1週間で40時間まで定められています。
  • これを超えた場合、企業と労働者の間で労働基準法第36条による協定(36協定)を結ぶことが義務付けられています。そして、36協定では、時間外労働の上限時間は「原則月45時間、年間360時間以内」と定められています。
  • 厚生労働省では、継続して月に45時間を超えた場合は、その事業者に対して、監察や指導をすることがあります。

3. 法定労働時間

労働基準法によれば、

労働時間は原則「1日8時間、週40時間」(休憩時間を除く)です。これを法定労働時間といいます。また、休日は原則として、毎週少なくとも1回与えることとされています。

ですが、世の中では、週40時間を超える残業はごくごく普通に行われています。
なぜ、このような労働が可能なのでしょうか。

労働基準法には、労働時間の延長をする2つの方法が定められています。

  • 「災害」等により「臨時の必要」がある場合(労働基準法33条)
  • 労使協定による場合(労働基準法第36条1条)

災害により臨時の必要がある場合は稀なので、通常は、後者の方法を用いることになります。この協定は労働基準法第36条に規定されていることから、「36(サブロク)協定」と呼ばれています。

4. 36協定

① 概要

通常時に時間外労働をさせるためには、必ず36協定が必要です。

具体的には、

  • ・労使協定の締結
  • ・労働基準監督署への届出

が必ず必要です。

労働時間の延長をする場合、会社の規模や延長する労働時間の長さ、人数に限らず、「必ず」労働基準監督署に届出が必要ですのでご注意ください。

協定は使用者と労働者の代表(労働者の過半数で組織される労働組合か労働組合の過半数の代表者)が書面で締結します。そして、協定を締結するだけではなく、その書面を管轄労働基準監督署への届出までしてはじめて、労働時間を延長することができます。

② 記載事項

36協定には以下の事項を記載します(労働基準法規則16条1項)。

  • ・時間外労働をさせる具体的事由
  • ・業務の種類
  • ・労働者の数
  • ・一日及び一日を超える一定の期間における時間外・休日労働の上限時間・日数等

③ 罰則付き時間外労働時間の上限

改正前の労働基準法では、36協定による時間外労働の上限の定めに法的拘束力がなく、特別条項をつけて36協定を締結すれば、法定の上限を超えても時間外労働をさせることが可能でした。

そこで、今回の働き方改革によって労働基準法が改正され、時間外労働時間に罰則付きの上限が定められ、規定の上限を超えて従業員を働かせることができなくなりました。
2020年4月から、中小企業を含む全ての事業者に対して、この改正が適用されています。
対応が遅れている場合は至急ご確認ください。

【上限の内容】

上限は原則月45時間、年360時間とされ、臨時的な特別の事情がある場合を除き上限を超えることはできません。
そして臨時的な特別の事情があり、労使が合意して延長する場合でも以下の制約があります。

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計について、「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平 均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」が全て1月当たり80時間以内(休日労働を含む)
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満(休日労働を含む)
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月まで

④ 違反した場合の罰則

上記の基準に違反する場合には、罰則が課される可能性があるのでご注意ください。

例えば、
・36条協定の届出をせずに残業や休日出勤をさせた場合
・36条協定で定めた時間を超えて時間外労働をさせた場合
には、労働基準法第32条違反で6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科される可能性があります。

さらに、36協定で定めた時間数にかかわらず、
・時間外労働と休日労働の合計時間が月100時間以上となった場合
・時間外労働と休日労働の合計時間について、2~6ヶ月の平均のいずれかかが80時間を超えた場合
等は、労働基準法第36条第6項違反となります(6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)。

上限規制や労使協定の記載については内容がとても細かいため、管理や手続の負担は小さくないと思いますが、法改正により、企業側に労働時間の適正な管理が強く求められています。トラブルが起きてからは大変ですので、お困りのことがあればお気軽にご相談ください。

5. 長時間労働が事業者に与えるデメリット

長時間労働は、労働者の心身の健康に支障を来すだけでなく、事業者側にも様々な悪影響をもたらします。長時間労働が企業にもたらすデメリットとしては以下のようなことが考えられます。

① 36協定違反による罰則

上述のとおり、36協定に違反した場合には、労働基準法違反による罰則が課される可能性があります。

② 安全配慮義務違反による損害賠償請求

厚生労働省の「労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針」によれば、

「使用者は、36協定の範囲内であっても労働者に対する安全配慮義務を負い、労働時間が長くなるほど過労死との関連性が強まることに留意する必要がある。」(指針第3条)

とされています。

安全配慮義務とは、使用者が労働者の生命や身体等の安全に配慮する義務をいいます(労働契約法5条、労働安全衛生法3条1項)。

36協定の範囲内の労働時間であったとしても、事業者がこの義務を怠り、労働者に損害が生じた場合には、労働者から損害賠償請求をされるおそれがあります。

例えば、
裁判所は、 飲食店従業員が長時間労働による疲労で急性左心機能不全になり、死亡した事案において、80時間の時間外労働時間を前提とした固定残業代が設定されていた点、三六協定で6ヶ月を限度に1ヶ月100時間の時間外労働を許容していた点を理由に、安全配慮義務違反を認めています(京都地判平成22年5月25日)。

また、裁判所は、長時間労働に従事した労働者がうつ病になり、自殺してしまったケースでも、使用者にその労働者の業務量を適切に管理する義務があったとして、長時間労働をさせたことについて安全配慮義務違反を認めています(最二小判平12年3月24日[電通事件])。

③ 過労死等による企業価値の毀損

過労死等とは、
・業務における過重な負荷による脳出血疾患・心臓疾患を原因とする死亡
・業務における強い心理的負荷による精神的障害を原因とする自殺による死亡
・死亡には至らないが、これらの脳出血疾患・心臓疾患、精神障害
をいいます(厚生労働省パンフレット『STOP過労死』)。

長時間労働により過労死等が発生してしまった場合、企業イメージが低下し、経営に影響を与える可能性があります。

④ 集中力や意欲の低下

長時間労働が続くと精神的にも体力的にも疲弊してしまいい、集中して業務を行うことができず、かえって生産が下がってしまうことが考えられます。また仕事への意欲や思い入れが減退するおそれもあります。

⑤ 離職率の増加

長時間労働で仕事が続け得られず、職を離れる従業員が増える可能性があります。離職率が高いままですと、安定して事業を継続することが困難になるおそれがあり、経営に影響します。

6. とるべき対応

では、長時間労働に対して、事業者側はどのような取り組みができるでしょうか。
まずは、労働基準法に則った手続を行う必要がありますが、それ以外にも以下のような対応が考えられると思います。

  • 労働時間の適正な管理(システムの構築やクラウドサービスの利用)
  • 36協定の掲示等による労働条件の周知
  • 有給取得の推進
  • 管理職向けの研修やセミナー
  • ノー残業デーの実施
  • 健康診断の実施

7. おわりに

今回は長時間労働の意味や事業者の対策を中心にご説明しました。長時間労働は望ましくないとは理解していても、法規制や手続、労働時間の管理等について不安をかかえてらっしゃる方も多いと思います。

従業員との間で不測のトラブルが生じないよう、まずは労働基準法の基本的な規定を理解することが大切ですが、専門的な部分については社会労務士や弁護士等の専門家による対応も必要になります。

神楽坂総合法律事務所では、社会保険労務士と連携してワンストップで紛争の事前防止、迅速な解決に努めております。長時間労働についてお困りの際は、お気軽に当事務所にご相談ください。

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