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貸主なら知っておきたい!立退き交渉のための基礎知識

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貸主なら知っておきたい!立退き交渉のための基礎知識

【読んでいただきたい方】

・建て替え等で借主に立退きをお願いしたい(又は検討されている)貸主の方。

【目次】

1.貸主から立退きを要求できる4つのパターン
①借主と貸主との合意による解除
②借主による一定期間を超える賃料不払いなど、債務不履行による解除
③契約期間の満了(なお、更新拒絶には要件を満たす必要があります。)
④契約期間について定めがない場合、法律に則った解約の申入れ
2.貸主の更新拒絶・解約の申入れには「正当の事由」が必要
3.借地権における「正当の事由」
①借地権設定者及び借地権者が土地の使用を必要とする事情
②借地に関する従前の経過
③土地の利用状況
④財産上の給付の申出
4.建物の賃借権の「正当の事由」
①建物賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情
②建物の賃貸借に関する従前の経過
③建物の利用状況
④建物の現況
⑤財産上の給付の申出
5.スムーズな立退きに向けて(交渉の流れ)

交渉を始める前に

土地やマンションなどの不動産を賃貸していても、

  • マンションのリフォームや建替えのために借主の方に一度出ていってもらいたい場合
  • より高い賃料で借りてくれる借主の方と賃貸借契約を締結したい場合
  • 近いうちに建替えを予定しているけれど、今から賃貸をしたい場合
  • 近隣から苦情が来ているが、契約違反とまでは言えない借主の方に立ち退いてもらいたい場合

があるかと思います。

このような場合に、

  • 貸主として、どのように借主の方と交渉を進めればいいのか?
  • 立退料はいくらぐらい払えば立退きに応じてもらえるのか?
  • 建替えにあたり注意することはなにか?

と、不安に思われる方も多いと思います。

実際、このような場合には、賃貸借契約を解約して、相手に賃貸物件から立ち退いてもらう必要があります。しかし、このためには、様々なハードルをクリアしなければなりません。

この記事では、借主の方に立ち退いてもらうためにどんなハードルをクリアしなければならないのかという、立退き交渉の前提となる基礎知識について、以下のような内容を知ることができます。

  • 貸主から立退きを要求できる4つのパターン
  • 貸主からの更新拒絶・解約の申入れには「正当の事由」が必要
  • 借地権における「正当の事由」とは?
  • 建物の賃借権の「正当の事由」とは?
  • スムーズな立退きに向けて(交渉の流れ)

神楽坂総合法律事務所は、不動産に注力した法律事務所で、年間100件以上、不動産に係るご依頼、ご相談を受けており、現に立退きや明渡案件も数多く経験しています。

例えば、当事務所にご相談いただいたことで、道路拡張工事の対象となる物件について、立退料、賃料減額等を条件に立ち退いてもらうことに成功した方がいらっしゃいます。

他にも、当事務所は、契約期間を満了した借地契約について、過去の家賃滞納の点、明渡猶予期間、建物の取り壊し義務の免除を条件に建物の無償譲渡を受けた事例(ただし、借家人がおり、別途賃料収入の確保)や、債務不履行とはいえないような騒音トラブルでも、契約期間満了、近隣苦情の説明、不動産会社から協力を得た代替不動産の準備等で、明渡料の請求なく、立退きに成功した事例も手がけてきました。

1. 貸主から立退きを要求できる4つのパターン

立退きを求めるためには、賃貸借契約を終了(解除)させなければなりません。
しかし、賃貸借契約は、簡単には終了することができない場合が多く、終了することができるのは、以下のような一定の場合に限られています。

  • ① 借主と貸主との合意による解除
  • ② 借主による一定期間を超える賃料不払いなど、債務不履行による解除
  • ③ 契約期間の満了(なお、更新拒絶には要件を満たす必要があります。)
  • ④ 契約期間について定めがない場合、法律に則った解約の申入れ

貸主が自分の自由な意思で、借主に立退きを求められるわけではないので、注意しましょう。

2. 貸主の更新拒絶・解約の申入れには「正当の事由」が必要

上記の4パターンのうち、建物の所有を目的とする土地の賃借権または地上権(これを「借地権」といいます。)、もしくは建物の賃借権について、契約期間が満了する場合に、賃貸人が賃貸借契約の更新を拒絶する場合(③)、および、期間の定めのない建物賃貸借について賃貸人から解約の申入れをする場合(④)には、解約するための「正当の事由」が必要です(借地借家法2条1号、6条、28条)。

3. 借地権における「正当の事由」

借地権の場合、この「正当の事由」があるかは、

  • 借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下同じ。)が土地の使用を必要とする事情
  • 借地に関する従前の経過
  • 土地の利用状況
  • 借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出

をした場合におけるその申出を考慮して判断すると定められています(借地借家法6条)。

これらの事情の中でも、借地権設定者及び借地権者の土地利用の必要性が基本的な判断要素です。
従前の経過、土地の利用状況、立退料の申出は、借地権設定者及び借地権者の土地利用の必要性だけで結論がつかない場合に、補完的要素として考慮されると考えられています。

① 借地権設定者及び借地権者が土地の使用を必要とする事情

一般に、契約の解除を肯定する方向の事情として、以下のようなものが考えられています。

貸主にとって目的土地が居住・営業あるいは生計維持に不可欠であること

例えば、貸主であった高齢者が、その生活のために、土地を駐車場等として利用することが生活を安定させるための唯一の方法であるといえるような場合には、借地権者の事情との比較で「正当の事由」にあたるとした事例があります。

借主に移転先が存在すること

借主が他に土地を確保できているような場合には、「正当の事由」があると認められやすくなります。

契約の解除を否定する事情としては、以下のようなものが考えられています。

借主にとって目的土地が居住・営業あるいは生計維持に不可欠であること

例えば、賃借人が商品の保管場所として、土地の使用を継続する必要性が高い場合には、「正当の事由」が否定される場合があります。

貸主が代替地等を有している、または、大きな資力を有していること
借主にとって移転が困難であるか移転費用が多額にかかることや資力がないこと

② 借地に関する従前の経過

この要素は、契約当時から契約期間満了時までの全ての事情が考慮されます。

例えば、地主が貸地を期間満了まで8年間も不法占有して借地人の使用を妨げてきた場合には、地主に土地使用の必要性があっても、貸主に背信行為があるとして、信義公平の見地から「正当の事由」がないと判断される可能性があります。

③ 土地の利用状況

例えば、借地が、借主でない第三者によって利用されている、借地がそもそも利用されていないなどの事情があれば、「正当の事由」があるという方向に働きます。

④財産上の給付の申出

立退料の申出がある場合には、「正当の事由」があるという方向に働きます。
例えば、地主が立退料1000万円を贈与し、しかも旧貸地に建設する建物内の店舗を他よりも有利な条件で賃貸する意思がある場合には、「正当の事由」があると判断される可能性があります。

4. 建物の賃借権の「正当の事由」

建物の賃借権の場合、建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情(①)のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過(②)、建物の利用状況(③)及び建物の現況(④)並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出(⑤)を考慮して「正当の事由」の有無を判断すると定められています(借地借家法28条)

これらの事情の中では、建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情(①)が基本的な判断要素になります。
「賃貸人が建物を必要とする事情」と、「賃借人(転借人を含む)が建物を必要とする事情」の比較を行い、前者が優越する場合には「正当の事由」があるとされる方向に働き、後者が優越する場合には「正当の事由」が認められない方向に働きます。
その上で、補完的要素として従前の経過、土地の利用状況、立退料の申出の事情等を総合して、「正当の事由」の有無が判断されます。

① 建物賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情

この事情は、第一に居住目的が優先され、次に、生計維持のための営業目的、最後に利潤追求のための営業目的という順序で必要性が考えられています。

「正当の事由」が肯定される方向の事情には、以下の事情があります。

賃貸人が建物を使用する目的が居住目的であること
賃貸人が建物を使用する目的が営業目的であること

例えば、建物の賃貸人が若年の婦女の身で母を顧みなければならず、当該建物に住んで何か商売を営むほか生活を立てる道がないという場合には、「正当の事由」が肯定されやすくなります。

賃借人が相当の移転先を有すること

「正当の事由」が否定される方向の事情には、以下などがあります。

賃借人が建物を使用する目的が居住目的であること

② 建物の賃貸借に関する従前の経過

例えば、賃貸借契約時に好意的な貸与という性格が強かった、賃貸借関係の期間が短いなどの事情があれば、「正当の事由」を肯定する方向に働きます。

逆に、賃借人が権利金を支払っている、賃借人が契約上の義務を履行しているなどの事情があれば、「正当の事由」を否定する方向に働きます。

例えば、誠実な賃借人として義務に欠けることなく10年余り営々として営業の基盤を築いてきた賃借人に対し、解約申入れをした賃貸人が執拗、悪質な営業妨害行為をくり返し、事実上、賃借人を営業停止に追い込んだ場合には、「正当の事由」が認められない可能性が高くなります。

③ 建物の利用状況

例えば、賃借人が深夜にもかかわらず大きな音をさせたり、レコードを大きな音でかけたりして賃貸人のひんしゅくをかい、賃貸人・賃借人間の信頼関係がもはや失われているなど、賃借人の建物利用態様が不良であるといえるような事情がある場合、「正当の事由」を肯定しやすくなります。

④ 建物の現況

例えば、賃貸建物が既に建築後60余年を経過し、老朽化が著しく地盤崩壊等の危険性すらあるなど、建物修補の必要性が高い場合には、「正当の事由」を肯定しやすくなります。

⑤財産上の給付の申出

十分な額の立退料が提供されている場合には、「正当の事由」を肯定しやすくなります。
例えば、賃貸人、賃借人双方の事情を比較するのみでは、どちらに自己使用の必要性が認められるかは明らかでない場合であっても、賃貸人が十分な立退料を支払うことによって「正当の事由」が認められる可能性があります。

逆に、具体的な事情に照らして立退料が十分とはいえない場合には、「正当の事由」を否定する方向に働きます。
例えば、賃貸人が土地の有効利用のため賃貸家屋の取壊しを予定しているのに対し、賃借人は借りている建物で和菓子の製造・販売および甘味喫茶を営んでおり、一家の生活の場としているような場合には、賃貸人からの解約申入れの際に500万円の立退料の提供があったとしても、「正当の事由」があるとは言いづらいといえるでしょう。

5. スムーズな立退きに向けて(交渉の流れ)

① 合意による賃貸借契約の終了

立退交渉をする場合には、まずは、合意によって賃貸借契約を終了することを目指しましょう。

そのために、まずは、民法や借地借家法に基づいて、賃貸借契約の解約の申入れを行います。
次に、任意による交渉を行います。この段階で立退きの可否や立退料、立退きの具体的な日時等を定めます。

② 調停・裁判上の請求

これらの交渉が上手く行かない場合には、調停や裁判上の請求などの法的手段を検討していくことになります。

専門家への相談

多くの場合、立退きをしてもらうためには半年以上の期間が必要です。
また、「正当の事由」が求められるような場合、この正当事由判断は総合考慮となっていて、裁判所の裁量の余地が広く、十分に具体的な基準が定まっていません。

ですから、①合意による契約の終了を目指す場合でも、②裁判上の請求等を検討する場合においても、効果的な立証を行って早期解決を目指すためには、一度専門家である弁護士にご相談いただくのが近道であると思います。立退きを検討している場合には、当事務所までご相談ください。

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