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禁止される増改築とは

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禁止される増改築とは

【読んでいただきたい方】
  • ・借地上の建物を増改築したい方
  • ・借地上の建物の増改築の範囲を知りたい方

借地上の自己所有の建物の増改築を検討している場合、「増改築の明確な線引きは?」「リフォームは増改築になるのか?」の疑問を持つ方が多いでしょう。
このページでは、増改築は禁止されているのか、「増改築」とは何か、無断増改築を行った場合のリスクについてご紹介します。

【目次】

1. 借地上の建物は増改築ができるのか
① 禁止される増改築の定義とは
② 建物の修繕は増改築にあたるのか
③ 増改築をした場合の承諾料の相場
2. 地主に無断で増改築を行った場合のリスク
① 地主との信頼関係を損ない契約解除になる可能性がある
② 借地権を抵当権の設定ができなくなるケースがある
③ 借地権を売却できなくなる
3. 借地上の建物の増改築に不安がある場合には当事務所へご相談ください

1. 借地上の建物は増改築ができるのか

土地賃貸借契約を締結している場合に、借地上の建物を増築・改築(以下、併せて「増改築」)を行うことはできるのでしょうか。以下、増改築とは何か、増改築の制限はあるのかについて解説していきます。

借地上の建物は借地人の所有にあるため、借地上の建物を増改築しても、それは原則として借地人の自由です。 また、借地上の建物の増改築に関して、借地借家法上、直接定める規定は、借地借家法17条2項になりますが、これは、「増改築を制限する旨の借地条件がある場合」の規定であり、増改築禁止特約がある場合に適用される規定です。そのため、増改築禁止特約が合意されていない限り、借地人は増改築ができることになります。

もっとも、借地上の建物の増改築が勝手に行われると、借地契約期間満了時の建物買取請求の負担が大きくなったり、法定更新がされやすくなったりする等、地主にとってリスクがあります。そこで、借地契約においても借地人に増改築禁止義務を課すべく、増改築禁止の特約をもうけることがほとんどです。

また特約が無い場合でも、増改築が地主に大きな影響を及ぼす場合には契約解除されるケースもありますし、後述するように信頼関係の悪化・抵当権設定の場面・借地権売却の場面におけるデメリットもあるので、増改築を行う場合には原則として地主に許可を得ておくことが重要といえます。

なお、借地と違って借家の場合、賃貸の対象は建物で、将来原状に復して返却する必要があるため、建物自体の増改築は民法上の善管注意義務違反、賃借建物の保管義務違反の契約違反となります。よって、借家の無断増改築はできないこととなります。

① 禁止される増改築の定義とは

では、借地契約の増改築禁止特約で禁止される増改築とは何でしょう。

「増築」とは、床面積を増やすことをいいます。骨組や構造から作り直す場合のほか、敷地内に新しい構造物を造ったり、平屋を2、3階建てに変えたりする場合をいいます。

「改築」とは、建築基準法によって「建築物の一部を除却又は、建築物が災害によって一部焼失した後、引き続いてこれらと用途・規模・構造の著しく異ならない建築物を立てる工事」と定義されています。床面積を変えないで間取りを変更することをいいます。

増改築禁止の特約がある場合には、これらを行う場合地主の承諾が必要となります。一般に、増改築禁止特約は、建物の種類,構造の変更により,法定更新が認められ借地権の存続期間が伸長したり,賃借人による建物買取請求に基づく賃貸人の負担が増大することを防止し,かつ,これらについての紛争を防ぐことが目的とされています。 そして、借地人が、このような増改築禁止特約に違反する場合、地主は、借地契約を解除できる可能性があります。ただし、一般に、借地契約は、借地人の生活の本拠を維持するうえで重要かつ継続的な契約です。そのため、後述するとおり、増改築禁止特約違反(=契約違反)があっても、即借地契約解除とはならず、その「増改築が借主の土地の通常の利用上相当であり,土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため,賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは,賃貸人が前記特約に基づき解除権を行使することは,信義誠実の原則上,許されない」とされています(「信頼関係破壊の法理」。最高裁判例昭和41年4月21日)。

② 建物の修繕は増改築にあたるのか

建物の老朽化等によって修繕する場合には、原則として増改築には当たらないので許可を得る必要はありません。しかし、建物の修繕であっても、大規模な修繕となる場合、「増改築」に該当する可能性があります。

この点、「修繕」にとどまるか、増改築にあたるような「大修繕」にあたるかについては、東京地決平成11年3月29日が以下のように判断しています。

「借地借家法一七条二項にいう増改築は、建増し、建て替え、移築などを意味するほか、増改築禁止の趣旨が、増改築工事により建物の耐用年数が延長され、借地権の存続期間に影響を及ぼすことを防止しようとすることにあるところからすれば、建物の存続期間に影響を及ぼす大修繕も同項にいう増改築に含まれるというべきである。ここで建物の存続期間に影響を及ぼす大修繕とは、建物の耐用年数に大きく影響を及ぼす工事をいい、建物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕(建築基準法二条一四号参照)であれば、特段の事情のない限り建物の耐用年数に大きく影響を及ぼすものと推認するのが相当である。」

借地権は、契約期間が満了したとしても、借地人が使用を継続するときは建物がある限り、契約を更新したものとみなされることになっており(借地借家法5条2項、1項)、建物の存続期間が借地権の存続期間にも大きく影響を与えることになります。そのため、上記裁判例では、建物の存続期間に直結する、建物の耐用年数に大きく影響する工事は、増改築に含まれると判断されました。

また、別の裁判例ではありますが、東京地裁平成28年1月19日は、「一般に増改築禁止特約は,建物の構造や現状等が借地法上の借地権の存続期間に影響し,解約申入れの正当事由の一資料になり得ることからこれらに影響を与えるような増改築を避ける趣旨で定められるものと解されるから,借地契約上禁止される「改築または増築」に当たるか否かは,かかる改築または増築を行うことが借地法上の借地権の存続期間に影響し,または,解約申入れの正当事由に影響を及ぼす程度の改築または増築であるか否かという点を考慮して決するのが相当である。」と判示しています。

この裁判例では、前期の平成11年の裁判例が示した点に加えて、解約申し入れの正当事由に影響を及ぼすか否かという点も、修繕が増改築にあたるかの判断要素であるとされています。

地主が借地契約の解約を申し入れるためには、借地契約を終了させることがやむを得ないといえるだけの理由としての正当事由が必要とされます。この正当事由に影響するほどの修繕(例えば、投下資本が大きく借地人側の長期間の利用を認めるべき方向に働く事情となるような修繕(=正当事由を否定する方向に働く事情となるような修繕)であれば、増改築禁止特約で禁止される増改築にあたる可能性があります。

まとめると、増改築禁止特約の対象となる増改築にあたるかどうかは、

  • ①当該賃貸借契約の存続期間に影響を及ぼすかどうか(具体的には、建物の存続期間を伸長させたり、経済的価値を増加させるような、耐震補強工事や内装工事等かどうか、
  • ②当該賃貸借契約の解約申し入れの正当事由に影響するような増改築であるか(多額の資本投下等があるか)

といった点が、判断要素となります。

③ 具体例

ア最判昭和41年4月21日

【結論】

  • 増改築禁止特約の増改築に当たる
  • 信頼関係を破壊させるほどではないため、契約解除はできない

【工事内容】

  • 玄関七合五勺及び向って玄関の左側三坪の応接室を除く其余の一四坪の部分の根太及び柱を取換えた。
  • 従前あつた二階五坪を取壊し、新たに二階一四坪に拡張した。
  • 二階居宅をいずれも壁で仕切った独立室とし、各室ごとに入口および押入を設置し、電気計量器を取り付けたうえ、新たに二階に炊事場、便所を設け、かつ、二階より直接外部への出入口としての階段を附設し、結局二階の居室全部をアパートとして他人に賃貸するように改造

➝当然、増加築にあたる

【信頼関係】

  • 住宅用普通建物であることは前後同一であり、建物の同一性をそこなわない。

➝本件建物の増改築は、その土地の通常の利用上相当というべきであり、地主の地位に著しい影響を及ぼさないため、解除権の行使は許されない。

イ東京地裁平成28年11月29日

【結論】

  • 増改築禁止特約の増改築にあたる。
  • 信頼関係を破壊させるほどではないため、契約解除はできない

【工事内容】

  • 建物1階から5階において,各部屋の撤去可能な間仕切壁,木製建具及び鋼製建具を撤去し,各部屋の天井または天井及び床を下地材ごと撤去。
  • 風呂,洗面所,トイレ,台所等の設備機器類を撤去し,押入れ,吊戸棚,その他収納場所の造付け家具・収納を撤去して本件建物内部をスケルトンにした。
  • 約2307万8550円相当の建築工事を施し,606万7460円総統の電気設備工事を施し,1018万4640円総統の給排水衛生・換気設備工事等を施す総額5779万5120円相当の工事。
  • 本件建物の外構部には変更を加えない。

➝もともと老朽化していた本件建物を全面的にリフォームする内容であるから本件建物の利用価値が相当程度向上することは明らかであるから,少なくとも,本件工事を施すか否かは,本件借地契約の解約申入れの正当事由に影響を及ぼすものといえ、増改築にあたる。

【信頼関係】

  • 元々本件建物は、「1階部分が新聞販売店の事務所,2階ないし5階部分が寄宿舎として主に利用されていたが,壁,床,天井,扉等が相当汚損した状態であった」。借地人は、「本件建物1階部分について事務所として賃貸し,本件建物2階ないし5階部分をシェアハウスとして賃貸するために,本件建物に本件工事を施したものであり,本件工事は,本件建物の使用態様を大きく変更するものではなく、残存期間中に本件建物を有効利用するための方策として合理的なもの
  • 本件建物は鉄筋コンクリート造りの堅固建物であるところ,本件建物のコンクリート構造部分は本件工事によっても変更されていないものであって,本件工事によって本件建物の朽廃時期が遅れるものとも認められない
  • 借地人は,本件工事に着手する前に原告に対し,本件工事について施工前と施工後の平面図や工程表などの資料を開示しており,さらに説明の機会を設けようとしており,原告に秘して本件工事を行ったものでもない。
  • 建築基準法上の違反もない

➝本件工事は,借地人の土地の通常の利用上相当であり,土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないものであって,賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあるとは認めらず、本件借地契約上の増改築禁止特約に基づき解除権を行使することは許されない。

④ 増改築をした場合の承諾料の相場

ア 地主が増改築を承諾しない際は、借地非訟手続きを

増改築禁止特約がある場合、地主の承諾を得なければいけないのは前述の通りです。 ですが、地主が承諾をしてくれない場合、裁判所に対して、地主の承諾に代わる許可を求めることができます。これは、借地非訟手続きというものの1つになります。

裁判所の許可は、増改築の着工前に行う必要があり、着工後は行うことができません。そして、裁判所の増改築許可に対しては、承諾料を支払うことが求められます。

イ 承諾料の相場

では、承諾料の相場はどの程度でしょうか。

この点、建物の新築とまではいえない増改築の場合は、増改築の規模に応じて異なりますが、更地価格の2%前後とされています。

なお、増改築のみならず建替え等の承諾の許可を得る手続きもあり、 建物を取り壊して新築の建物を建てる場合、 又は ほとんどそれと変わらない場合 には、承諾料は、増改築の場合もよりも一般的に高く、更地価格の約3%といわれています。

ただし、借地権の満期が迫っている場合や、建物の床面積を増やした場合、建物の用途を変更する場合は増額され、更地価格の5%程度となることもあります。

このような承諾料の金額決定は、裁判所の鑑定委員会(不動産鑑定士などから指名される)が鑑定した結果から裁判官が決めます。この鑑定委員の費用に関しては国が負担してくれるため、借地権者や地主が鑑定費用を負担することはありません。

2. 地主に無断で増改築を行った場合のリスク

地主に無断で増改築を行った場合、地主と借地権者の関係が悪化し、下記のような不利益を被る可能性があります。

① 地主との信頼関係を損ない契約解除になる可能性がある

一般的に、契約を解除するためには、契約当事者間の契約違反があることが必要です。また、契約違反の内容によって解除前の催告の要否が異なります。

また、賃貸借契約を解除するためには、前述のとおり、これらに加えて、地主と借主の間の信頼関係が破壊されたことが必要です。このことを信頼関係破壊の法理といいます。

信頼関係破壊の法理が採用されているのは、賃貸借契約は当事者の長期的な信頼関係を基礎とする契約であるし、借主にとっては生活の拠点を確保するための重要な契約であるため、借主 を保護するべく、信頼関係が破壊されていないのであれば契約の解除を認めないということにあります。

この点、借主に契約違反といえる行為があった場合、地主側は信頼関係は破壊されたと考えるのが通常であるため、信頼関係は破壊されていないと主張する借主側は、「信頼関係が破壊されていないと認めるに足りる特段の事情」を立証する必要があります。

信頼関係が破壊されていないと認められる要素としては、例えば、容易に撤去できる簡単な仮建築程度のもので、建物に与える影響も軽微なものにとどまるものです。

結局、借主側で信頼関係が破壊されていないことを立証できれば良いのですが、地主に無断で増改築を行い契約違反があった場合、信頼関係が破壊されたとして契約が解除される可能性があります。

また、その程度によっては無催告で解除される可能性もあります。例えば、当初賃貸していた建物面積に対して増築した部分の面積の割合が高く、容易に原状回復することもできないような場合は無催告解除が認められる可能性があります。

よって、借主は増改築を行う場合、必ず地主の許可もしくはこれに代わる裁判所の許可を得るようにしましょう。

② 借地権を抵当権の設定ができなくなるケースがある

建物の増改築や建て替えリフォームの際には、その費用をねん出するために金融機関等のローンを利用することもあります。借地上の建物の増改築等のローンの場合、金融機関から一定の書類が求められます。

その中に、担保設定についての地主の承諾書である「抵当権設定承諾書」(融資承諾書)が含まれることも多いです(なお、建物への担保設定自体には法律上地主の承諾は不要です)。

そして、「抵当権設定承諾書」(融資承諾書)を得ることができない場合、すなわち、地主の承諾が得られないような場合、金融機関の融資を受けることができないことになります。

なお、「抵当権設定承諾書」(融資承諾書)に代わって裁判所が許可をする制度は認められていないため、地主の承諾の代わりに裁判所に許可を求めることはできません。

③ 借地権を売却できなくなる

借地契約において、地主の承諾が必要な場面は、増改築の場面に限りません。地主と関係が悪化すると、地主から各種承諾が必要な場面でもらえなくなるという不利益が生じる可能性があります。

特に、民法612条は、借地権の無断譲渡を禁止しており、地主の許可なく賃借権を譲渡した場合、契約を解除される可能性があるのですが、借地上の建物を売却する場合、この借地権譲渡が伴うため、地主の承諾が必要です。
また、契約の解除がなされると、賃借人は賃借権を譲渡した契約の相手方から債務不履行に基づく損害賠償請求を受ける可能性があります。

一方、建物を購入する人の立場からすると、地主と争うおそれのある不動産を購入しようとは思いません。また、実際購入を検討する人がいたとしても、上述のようにローンのための抵当権設定同意書(融資承諾書)を取得することが難しい状況では、住宅ローンの使用ができず、買い手が限定され、売買金額が下がることになります。
なお、借地上に借地人所有の建物を建築してこれを第三者に賃貸することは、民法612条1項が想定する「賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸」には当たりません。
理由としては、

①土地賃借権そのものを譲り渡しているわけではない上に、土地の使用状況が変わらない
②土地賃貸借を行った以上は、地主は土地上の建物の賃貸は甘受するべき

といったことがあげられます。

また、借地権譲渡について、地主がどうしても承諾をしない場合には、地主の承諾に代えて、裁判所に承諾を求めることができます。これは、地主が「合理的な理由」なく承諾しない場合に、借主が不合理な財産の制約を受けてしまうため、裁判所が代わって許可することを認める趣旨です。 もっとも、過去の無断増改築は「合理的な理由」を認める要素として働きます。

3. 借地上の建物の増改築に不安がある場合には当事務所へご相談ください

借地上の建物の増改築に不安がある場合には、契約の内容を確認・解釈し、増改築が禁止されているのか、禁止されているとして承諾を得ることができるのか、非訟手続きを踏むことができるのか確認することが必要です。承諾を得ないで増改築を行った場合のリスクを適切に管理することも必要です。

借地上の建物の増改築でお悩みの際は、神楽坂総合法律事務所へご相談ください。依頼者様のご希望に寄り添い解決策を検討いたします。

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