- ・高齢のため株式会社の廃業を考えている方
- ・後継者がいないので株式会社の廃業を考えている方
高齢や後継者不足を理由に、会社の廃業を考えている経営者は少なくありません。
中小企業庁の行ったデータの結果、廃業するおよそ4割の方が、高齢や体力の衰えを理由としています。
しかし、会社の廃業は手続きが複雑で、また代表者が独断で決めることはできません。
今回は、会社の廃業について詳しく解説していきたいと思います。
【目次】
- 1.廃業する前に行うべきこと
- ① 廃業は株主総会で決定する
- ② 各所に廃業の通知を行う
- 2.会社の廃業後行う手続き
- ① 社会保険や税金関係等に廃止届出を出す
- ② 官報に解散の公告を掲載する
- ③ 剰余金の分配、債務の弁済、債権回収等を行う
- ④ 解散事業年度の確定申告を行う
- ⑤ 清算確定申告を行う
- ⑥ 清算後の決算報告書を作成する
- ⑦ 清算結了登記を行う
- ⑧ 清算決了届を税務署に提出する
- 3.廃業を検討するうえで念頭に置いておくこと
- ① 時間がかかる
- ② お金がかかる
- ③ 手続きがかなり複雑
- 4.廃業を検討されている方は当事務所へご相談ください
1.廃業する前に行うべきこと
高齢や体力の衰えを理由とする廃業のほか、株式会社の経営が円満にうまくいかなかった場合、廃業の選択を余儀なくされる場合があります。株式会社の廃業に必要な手続きは、後述するように廃業前後を通じて多岐にわたり、費用や時間がかかります。
そこで、本当に廃業を必要とする状況なのか慎重に検討することが求められます。
そして、廃業の方法としては、株式会社の解散・清算が一般的ですが、その方法以外にも、休業や、事業承継、会社分割による不採算事業の切り離しなどの手法を用いて、廃業という目的を達することができる場合があります。
財産的な価値があるのであれば、事業承継ではなく、M&A等という方法も選択肢のひとつです。
一方で、債務が大きいと解散や通常の清算はできません。破産や特別清算の手続を利用する必要があります。
以下、慎重な検討を経て、株式会社を解散・清算するという方法で廃業を行う場合の手続きについてご説明します。
① 解散は株主総会で決定する
株式会社が解散により廃業する場合、株主総会で決議を行う必要があります。ここでいう決議とは、過半数で行われる通常決議とは異なります。解散は株式会社の基礎に重要な影響を与える決定なので、慎重な判断が株主総会に要求されます。
そこで、株主総会の特別決議(株主総会に発行済み株式数の過半数の株主が出席し、2/3以上の賛成)が必要です。
その際には、廃業に際しての清算人も決める必要があります。清算人が廃業の実際的な作業を進めることになります。
解散が株主総会で決定し、清算人の選任も行われた場合、法人解散の決まった日から2週間以内に解散・清算人選任の登記を行わなければなりません。
② 各所に廃業の通知を行う
廃業とは、それまで行っていた事業を終了することをいうため、多くのステークホルダーに影響を与えます。そのため、社員や顧客などのステークホルダーに書面による通知を行うことが通常です。
廃業の通知書に廃業の理由を記載する必要はありませんが、未了の取引がなかったとしても廃業予定日の2、3か月前には各取引先等に通知した方がよいと思います。以下、具体的に解説します。
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従業員対応
廃業は、従業員から見ると労働契約の終了を意味することが多いです。よって、従業員からは反対の声が上がることが多いため、対応のために早期に通知をすることが求められる場合があります。
なお、労働者の解雇は労働契約法上は自由に行うことができず、客観的に合理的な理由・社会通念上相当と認められることという2つの要件が認められて初めて有効なものとなります。
解散に伴う解雇の多くの場合は、後継者がいない場合や、事業が上手くいっていないことを理由とするものであり、
過去の判例では、会社清算においての解雇を有効とする基準として整理解雇を有効とする4要件(1.人員整理の必要性 2.解雇回避努力義務の履行 3.被解雇者選定の合理性 4.解雇手続の妥当性)
が適用された例があります。整理解雇は、会社の事情による解雇といえますので、解雇が有効かどうかは比較的厳格に判断されることになります。
また、解雇については、労働者に懲戒事由がある場合などを除き、労働者の生活保護の観点から、1か月以上前の告知か、一か月分の給料にあたる解雇予告手当の支払いが要求されます。いずれにせよ、1か月以上の給料を支払う必要があります。就業規則の定めによっては退職金の支払いが別途求められる場合もあります。
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取引先対応
取引先に影響を与えることを考えると、解散直前に通知するのではなく、余裕をもって通知することが求められます。
また、取引関係が長期に及んでいた場合、契約書などがなくても、個々の契約とは別に継続的な基本契約が法律上成立していると考えられる場合があります。
このような場合、一方的な契約終了には制限が課されたり、場合によっては損害賠償責任が生じる危険性があります。
そのため、以下のような点も考慮ししながら、取引先への通知を行った方がよい場合もあります。Ⓐ 正当な理由の提示
廃業など、やむを得ない事情がある場合は、その理由を明確に説明し、相手方の理解を得るよう努めます。
Ⓑ 十分な予告期間の設定
突然の取引終了を避け、相手方が新たな取引先を見つけるなどの対応ができるよう、十分な予告期間を設けます。
Ⓒ 損失補償や代替案の検討
相手方が取引継続を前提に多額の投資をしている場合、その損失を補償することを検討します。また、の取引先の紹介など、相手方への影響を最小限に抑える代替案を提示します。
Ⓓ 段階的な取引縮小
急激な取引終了ではなく、徐々に取引量を減らしていく方法を検討します。
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不動産オーナー対応
不動産オーナーに対しては、不動産賃貸借契約の終了の通知を行う必要があります。
自己の事情で契約を一方的に終了させることは原則としてできないので、期間満了時に契約を更新しない旨の通知を行うか、事前告知による解約等を行うこととなります。
2.会社の廃業後行う手続き
会社を廃業するにあたっては、様々な手続きが必要となり、多くの時間と費用がかかります。ここでは、まずどういった手続きが必要であるかについてみていきます。時間や費用については後述します。
① 社会保険や税金関係等に廃止届出を出す
廃業が決まったら、社会保険・税金関係等への廃止届出を出す必要があります。
具体的には、税務署・県税事務所市町村に対しては、解散の届出・消費税事業廃止届・給与支払事務所への廃止届出などの提出が要求されます。また、従業員の解雇が発生した場合、雇用保険や、社会保険の手続きが必要となってきます。
② 官報に解散の公告を掲載する
前述のように、廃業は取引先・金融機関などの債権者に大きな影響を与える重大事項にあたります。そのため、会社は解散をする際に官報を用いて、債権者に解散を告知する必要があります。
官報とは、法令・条約・予算・告示・国会事項・人事・叙任などを,国が一般国民に知らせるために独立行政法人国立印刷局から発行する日刊機関紙をいいます。公告期間は2か月以上とされています。
③ 債務の弁済、債権回収、剰余金の分配等を行う
解散時点での決算書類をもとにして、債権の回収・保有資産の換金を行います。
廃業は、解散・清算というステップを踏むところ、清算のためには、資料として、解散時の決算書類を作成しておく必要があります。
また、廃業を進める株式会社の財産目録や貸借対照表などを準備し、株主総会で承認を得る必要があります。
そして、金融機関や取引先に対して負債がある場合、その返済を行う必要があります。
債権者に対する債務の弁済は、上記官報公告の期間が満了した後に行わなければいけません。
なぜなら、債権者によって、官報公告を見て、会社に連絡するまでの時間が異なるうえ、返済原資に不足がないよう確認し、不足があるのであれば債権者に平等に返済する必要があるからです。
債務の弁済が終わった後になお残余財産がある場合には、剰余金の分配を行います。
④ 解散事業年度の確定申告を行う
株式会社の決算書類をまとめ、これをもとに解散事業年度の確定申告を行う必要があります。
ここで注意しなければいけないのは、解散事業年度の確定申告とは別に、清算まで終わった段階での確定申告の、合計2回の確定申告が必要となる点です。
この時点では、解散事業年度の確定申告を済ませます。解散事業年度の確定申告は、解散が決まった日から2か月以内に行わなければいけません。
⑤ 清算確定申告を行う
上述したように、解散・清算の2回のタイミングで確定申告をする必要があります。そのため、解散事業年度の確定申告に加えて、清算確定申告を行う必要があります。清算確定申告は、残余財産が確定してから1か月以内に行わなければいけません
⑥ 清算後の決算報告書を作成する
上記までで清算が終了したら、終了した時点での決算書を作成する必要があります。そして、作成した決算報告書を株主総会に報告して承認を受けなければいけません。
⑦ 清算結了登記を行う
株主総会で決算報告書の承認を受けたら、次に法務局で清算結了登記を行う必要があります。
清算結了登記とは、会社の清算手続きの一部であり、会社が清算して消滅したことを登記することです。
清算結了登記は、決算報告書の承認を受けてから2週間以内に行う必要があります。清算結了登記を行うと、株式会社の登記記録が閉鎖されるため、会社は完全に消滅します。
なお、廃業する株式会社に支店がある場合、支店の所在地でも清算結了登記を行う必要があります。株式会社の廃業・解散が登記簿から分かるようになるため、取引の安全を守ることができます。
⑧ 清算結了届を税務署に提出する
清算結了登記が完了したら、管轄の税務署や、都道府県税事務所・市区町村役場などに清算結了の届出を行う必要があります。
届出時に異動届出書・登記事項証明書を提出します。登記事項証明書は閉鎖事項全部証明書となります。
以上で会社清算手続きはすべて完了となります。
3.廃業を検討するうえで念頭に置いておくこと
① 時間がかかる
株式会社の廃業には最短でも2か月程度必要となります。
上にも記載した通り、解散による廃業には、
- 株主総会での決定
- 各所に廃業の通知
- 社会保険や税金関係等に廃止届出の提出
- 官報に解散の掲載
- 債務の弁済、債権回収、剰余金の分配
- 解散事業年度の確定申告
- 清算確定申告
- 清算後の決算報告書の作成
- 清算結了登記
- 清算結了届を税務署に提出
などの複雑で多様な手続きを踏む必要があります。
すべての手続きが円滑に進んでも2か月を要するということであり、会社の規模や、過程が円滑に進まなかった場合、もっと時間がかかります。
将来の廃業にそなえて必要な書類を日常的に整理しておくことは重要といえます。
また、後述するように別途費用は掛かるものの、専門家の助けを得ながら手続きを行うことで、短時間で廃業を行うことが可能になります。
② お金がかかる
株式会社の廃業には以下の費用がかかります。費用は概算の相場なので、ご参考にしてください。
- 解散登記、清算人選任登記にかかる費用 39,000円
- 清算結了登記にかかる費用 2,000円
- 会社廃業の官報公告にかかる費用 1行につき3,589円(税込)
- 解散の公告は9から11行ほどが目安とされているため、3~4万円程度かかります
- 証明書の取得にかかる費用 1,294円~1,534円に加えて、郵送代の数千円
- 専門家への相談費用等 数十万円
② 手続きがかなり複雑
株式会社の廃業には、解散・清算というステップを踏む必要があり、税務上、登記上の手続が多数に及びます。
また、債権の回収、債務の弁済、ステークホルダーに対する通知も求められ、手続きの内容が複雑なことに特徴があります。
また、以下のような事実上の作業が多いことにも特徴があります。
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賃貸テナントの残置物処理明け渡し
貸物件が必要なくなるため、契約の終了にともないこれを返還することは当然ですが、その際に不動産の残置物を処理しなければいけません。
具体的には、会社の商品などの在庫や、社内の機械や備品などの設備について、現金化又は処分が必要となります。
また、電話・インターネット設備・電気・水道などの公共料金の解約手続きも必要となります。 -
従業員の解雇
従業員の解雇が必要となることは上述の通りですが、従業員一人一人に生活があり、背景があるため、粗雑に扱うことができません。
また、適切に配慮を行わなければ、客観的に合理的な理由の不存在、もしくは、社会通念上不相当と認められ、解雇が無効となるおそれがあります。従業員に対する説明会を実施するなどの手続を踏むことが求められる場合もあります。また、解雇予告手当の支払いや、解雇通知の作成、場合によっては退職金の支払いも求められます。
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その他
その他、各種ステークホルダーに解散の通知が必要となります。特に取引先に書面で通知を行うことが求められているので、忘れずに通知を行いましょう。
4.廃業を検討されている方は当事務所へご相談ください
まずは、会社に起こっている状況、会社の資産状況、目的から本当に廃業が必要なのか、売却や休業では足りないのか慎重に検討をすることが重要ですが、その判断には専門的な判断を伴うことが多いです。
また、廃業を決定した後にも、会社内部での手続、登記に関する手続き、税務上の手続、各種ステークホルダー対応など、法律上・事実上要求される手続が複雑多様であるため、お金と時間がかかる傾向にあります。
そのため、行うためにも専門家への相談が必要な場合があります。
廃業に関してお悩みの際は、神楽坂総合法律事務所へご相談ください。依頼者様のご希望に寄り添った解決策をご提案します。
また、当事務所では、ご依頼者様の状況によっては廃業以外の手段等も提案いたしますので、廃業をするかどうかお悩みの段階でのご相談も承ります。
- 社長が突然亡くなり、経営にノータッチの相続人が廃業を行った事例
【ご相談内容】
ご相談者のお父様が会社を経営していましたが、ご相談者は、その会社経営に今まで関与したことはなく、内情も全く把握していない状況の中、お父様が急逝されました。
ご相談者としては、会社の内情もわからず、どこから手を付けたらよいかすらわからない状況でしたので、当事務所へご依頼。
【弊所解決の内容】
当事務所では、決算書や契約書等を、従業員の協力のもと集め、従業員や第三者への引継ぎ(株の売却)と廃業を検討し、ご依頼者は、廃業を選択されました。
そこで、当事務所は、新しい代表取締役の選任手続き、解散精算手続きの他、賃貸していた倉庫の解約や在庫の廃棄処分、従業員への解雇等を行い、ご依頼者を含め、関係株主に残余財産を分配するところまで対応いたしました。
神楽坂総合法律事務所は、リーガルサービスの質の良さと迅速さにこだわります。
司法書士や行政書士をはじめ、社会保険労務士、土地家屋調査士、不動産仲介会社との連携により、ご依頼者様の抱えるさまざまな不安や問題の解消を目指します。
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