- ・両親・配偶者・子・兄弟姉妹が海外に別荘を持っている人
- ・両親・配偶者・子・兄弟姉妹が海外に不動産を購入し移住している方
親などが死亡し、相続人となり、遺産の調査を進めていると、被相続人が海外に不動産を所有しているケースがあります。
海外に相続対象の不動産があった場合、不動産のある国によって、相続方法が異なる場合があります。
今回は、外国不動産の相続手続きについて解説していきましょう。
【目次】
1. 外国不動産の相続は自力で可能か?
外国不動産の相続手続きを自力で行うことは可能なのか、疑問に感じている方もいるでしょう。
結論から述べると、「ほぼ不可能」といえます。以下、何故、自力での外国不動産の相続がほぼ不可能といえるのか、その理由をご紹介します。
大きく分けて3点あげられます。
- ① 外国不動産の相続は国によって適用される法律が異なる
- ② 専門知識を含む会話を外国語で行うのはハードルが高い
- ③ 国によってはプロベイトを行う必要がある
ここでは、これら3点について詳しく解説していきます。
① 外国不動産の相続は国によって適用される法律が異なる
被相続人の不動産などの財産を承継するという手続きが相続です。この相続という手続きをする上で、「どの国の法律に従って手続きをするか」、これを考える必要があります。
被相続人の国籍が日本であり、不動産も日本国内にあるという場合には、特段の問題はありません。しかし、
(1)日本以外の国籍の者が、日本国内に不動産を所有しているという場合
(2)被相続人の国籍が日本であるが、不動産が海外にある場合
これらの場合には、その不動産を相続する際に、日本と本国、いずれの法律を適用するべきかが問題となります。
こうした、日本と海外の境界で起きた問題の際に考えるべき法律が、国際私法です。
「国際私法」とは、当該国の外国人が登場する法律関係や、外国において発生した法律問題(国際結婚や、外国企業と日本企業との間の問題など)について、どの国の法律を適用するべきか定めた法律をいいます。
国際私法は各国によって定められており、内容も国によって異なります。
日本においては、「法の適用に関する通則法(以下では単に「通則法」と呼びます。)」という名称の国際私法を制定しています。国際私法(通則法)によって適用されるべきと定められた法律のことを「準拠法」といいます。
通則法に基づくと、第36条は「相続は、被相続人の本国法による。」としているため、被相続人が国籍を有する国の法律が準拠法となります。そのため、原則として
上記(1)
の場合には、被相続人が国籍を有する国の法律が準拠法となり、上記(2)
の場合には、日本の相続法が準拠法となります。もっとも、
上記(1)
の場合でも、例外として、日本法が適用される場合があります(「反致」といいます)。反致とは、いったん外国の法律が準拠法になった後、その外国の法律によってまた日本の法律が準拠法になる場合をいいます(反対に、外国⇒日本⇒外国といった流れになる場合もあります)。
具体的には、
上記(1)
の場合で、当該国の法律により、相続に適用される法が不動産所在地の法による等とされていた場合に、日本法が準拠法となるといった場合です。また、不動産相続に関しては、不動産の所在地で手続きを行うことになりますが、そもそも国際私法は、各国でバラバラに定められており、国によっては、不動産相続について「所在地の国の法律を準拠法とする」としている国もあるため、注意が必要です。このような国にある不動産の相続にあたっては、たとえ、相続人が日本人であったとしても、当該国の国際私法が指定する当該国の法律によって手続きを行うことになります。こうした規定を置いている国としては、アメリカやイギリス、中国などがあります。
ここまでのことをまとめると以下のようになります。
- 被相続人が亡くなる
- 被相続人の所在地・国籍・遺産の所在地を確認し、国際的要素の有無を確認する
- ① 国籍が日本で、遺産の不動産も国内にある場合
② 国籍が海外で、遺産の不動産が国内にある場合
③ 国籍が日本で、遺産の不動産が海外にある場合 - ① 日本の相続法が適用される
② 原則として海外の相続法が準拠法となるが、反致について検討する必要がある
③ 原則として日本の相続法が準拠法となるが、不動産所在地の国の法律によっては、所在地の国の法律が準拠法となる場合がある - 確定した法律によって相続の手続きを開始する
以上のように、外国不動産の相続は国によって適用される法律が異なるため、専門家の力を借りず、自力での相続手続きは困難といえます。
② 専門知識を含む会話を外国語で行うのはハードルが高い
海外の不動産の相続手続きにおいては、海外の裁判所に相続手続きを申し立てざるを得ないこともあり、後述するように、管理清算主義を採る国では、プロベイトを行う必要があります。
その場合、海外の準拠法に基づく、専門知識を要する会話を外国語で行う必要があり、専門家且つ、その国の言語に慣れている者でなければ、通常困難を極めます。
専門知識を含む会話を外国語で行うのは、ハードルが極めて高いことも、自力での相続を困難にしているといえます。
③ 国によってはプロベイトを行う必要がある
英米法国であるアメリカやイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールでは遺産承継に関して「管理清算主義」というものを採用しており、裁判所の監督下で行われる清算手続を経て、残った積極財産のみが相続人に分配されることになります。
このように、裁判所が関与する一連の相続手続きを総称して「プロベイト」といいます。
「包括承継主義」とは、被相続人の財産、負債が包括的に相続人に承継される考え方をいいます。包括承継主義は大陸系諸国であるドイツ・フランス・イタリア・スイス等で採用されています。
包括承継主義の場合、相続人は遺産管理人の関与を必要とすることなく相続財産に関する交渉を行うことができます。
ここからは、プロベイトについて、もう少し詳しく解説します。
プロベイトにおいては、遺言書の有効性の確認・遺産に関する債権債務関係の確定と清算、相続人の確定と遺産の分配を行います。これらは裁判所が関与しながら進めていきますが、国によっては2~3年かかる場合があります。
具体的にアメリカのプロベイト手続の概要を解説します。
アメリカのプロベイト手続においては、
- 有効な遺言で指定された遺言執行者・裁判所が選任した遺産管理人のいずれかが人格代表者として選任される
- 人格代表者は被相続人の遺産を集計して目録を作成し管理を行う
- 被相続人の、債権者に対する負債を清算し、税金の申告を行う
- 残った積極財産を相続人や受遺者に
分配する
という流れになります。
なお、相続人・受遺者の範囲は州法や有効と判断された遺言によって確定されます。
プロベイトには極めて高い専門性が伴います。また、日本と海外は制度が異なるため、現地の制度に対応した書類を準備しなければならない場合があります。加えて時間がかかり、日本の相続税に該当する税金を納める必要もあります。
このように、専門性が高いプロベイト手続を必要とする場合にも、自力での相続は困難といえます。
どこの国の法律を適用するのか判断するためには、各国の法律を参照する必要がありますし、相続手続きをその国の言葉で行う必要もあります。プロベイト手続といった高度に専門性を有する手続きもあるため、外国不動産の相続手続きに精通した専門家に相談して手続きを行うことが求められます。
また、そもそもそのような面倒な外国不動産の相続手続きが生じないよう、生前に不動産を処分する、またプロベイトが不要な遺言書、信託の利用を検討する等対策を講じる必要があります。外国不動産の処遇にご心配がある方は、まずは、当事務所へご相談ください。
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